【エッセイ】月(Moon)考察

創造人話 ~オリジナル作品~

今宵の月はいかがですか?

月は不思議
その姿の美しさは、どんな景色にも「ぴたり」と合います

深い山の谷間に浮かぶ月
湖にその姿を映す月
そして人間の築き上げた都市の中、ビルの上に輝く月

どの姿も美しく、辺りの景色を神秘的にする。

これは何だろう…どういう力が働いているのだろう…いつもずっと不思議に思っていました

月の神秘に魅入られる人は数多います

そして月に魅入られた人は、どこか浮世離れしたところがあるような気がします
月そのものが、別の世界に通じているような、別の世界の入り口のような、そんな存在に思えるからでしょうか?

1990年に出版された石川賢治さんの写真集『月光浴』を見ていると、月の光の美しさ、そしてその力が恐ろしいほど感じられます

満月の光だけを光源として撮影されたその風景は、なんと幻想的な世界なのでしょう
陽が昇っている時と同じ地球の景色とはとても思えません
地球全体が澄んだ湖の中に沈んでいるようです

私達の住んでいるこの世界は、なんて素晴らしい世界なのでしょう
多面性のある、奥深い、惹き付けられずにはいられない世界
私達人間がその在り方をどの様に変えても、凛とした威厳を崩さない、決して侵されない、侵すことの出来ない世界…

月の光は改めてそれらを思い知らせてくれるようです

写真家「石川賢治」さんのホームページのリンクを貼っておきます
とても美しいホームページですので、是非一度ご覧ください
満月の光のみで撮影された幻想的な写真が沢山見れます

☆石川賢治「月光浴」月光写真展示室

月と神話

月は、神話においても、沢山の国で凛とした姿の神として祀られています
ただ、そうは言っても千差万別
国により解釈が違うようです

月の神は国によって、男性であり、女性であり、一人であり、複数であります

ギリシャ

ギリシャ神話では月には3人の女神がいます

「セレーネ」「アルテミス」「ヘカテ」

この3人がそれぞれ満月と、上弦の月、下弦の月を表しているとも言われ、夜ごと姿を変える月を別の女神としてたとえています

中でも「アルテミス」はローマ神話の「ダイアナ」と同一視され、太陽神「アポロン」の双子の妹であり、狩猟と貞節の女神としても有名です
古くは山野の女神でもあるのですが、彼女の持つ「銀の鎖」は海水を自在に操り、潮の満ち引きを意のままにすることが出来るとされています

古代の人は月が大海の潮位に関わることを早くから知っていたようです

山野の神が、ポセイドンの支配する海の潮位を操るなんて考え、「月の引力」が潮の満ち引きを起こす原因と解っていたからでしょう

日本

さて、日本では月の神は男神です

古事記では「月読命つくよみのみこと」と呼ばれ、日本書紀では「月夜見尊つくよみのみこと」と漢字が違います
日本の三大貴神とされる、女神「天照大神あまてらすおおみかみ」の弟であり、男神「須佐之男命すさのおのみこと」の兄でもあります

「天岩戸伝説」のような、有名な逸話の少ない神様ですが、日本書紀のほうに一説ありますので、ご紹介します

月の神「月読命つくよみのみこと」が、日の神「天照大神あまてらすおおみかみ」の使者として「保食神うけもち」のところへ訪ねるお話です

保食神うけもち」がおもてなしの為に食べ物を出したのですが、「保食神うけもち」の口から出た食べ物だったので「月読命つくよみのみこと」が「汚い」と「保食神うけもち」を殺してしましました
保食神うけもち」の死体からは様々な食糧が生え農耕の起源となりました
保食神うけもち」が殺されたことを知った「天照大神あまてらすおおみかみ」は大層怒り「汝はこれ悪しき神なり、相見じとのたまい」と言って「月読命つくよみのみこと」を悪神とし、「すなわち「月読命つくよみのみこと」と一日一夜、隔て離れて住たもう」と、月と太陽が離れて暮らしている理由が書かれています

なお、古事記ではこのエピソードが「須佐之男命すさのおのみこと」が行ったことになっています

因みに古事記では「須佐之男命すさのおのみこと」が治めている「海原」は、日本書紀では「月読命つくよみのみこと」が治める事になっています

エジプト

エジプト神話では、「トト神」が代表的な月の神らしいです

「トト神」は自力で石から生まれたとされ、親がわからない神で、知恵の神でもあります
月の神とされた逸話に、「大神ラー」より1年間全ての日で、子供を産んではいけないとムチャぶりされた天空の女神「ヌト神」の為に、月と喧嘩して5日の時間を勝ち取り、「ヌト神」は追加の5日で子供を産むことが出来たという神話があります

他にも「コンス神」(頭上に満月と三日月を載せたハヤブサ頭をした人物)が月の神とされていますが、エジプトの神話は時と場によりかなり信仰が変わっていったので、名前や立場に複雑なものがあります
エジプトでは、月の神とされるものは「知識」と「時間」に関することが多く、海に関しては記載がありません

ちなみに日の神は、「朝日」「天中」「日没」でそれぞれ名前が変わっていましたが、そのどれもが男性神としてでした

インド

インドでは(初期の神話によると)犠牲の神「ソーマ」(またはアムリタ)という男性神、他に「チャンドラ」という豊穣の神が月の神とされていたようです

インドも神話が複雑で、謂れや逸話に諸説あるそうです
特にインドの宗教ヒンドゥー教はでかい土地で広まったので、色々な土地の地元の神様が有名な神様にくっついたりしているので、矛盾の嵐みたいです。

特に月の神様としての逸話は見つかりませんでした

月と太陽と人間

月は太陽に比べると断然小さいのに、太陽の神の兄弟として多く語られ、その力もほぼ同等とされているものが多いです

月より400倍遠い太陽は、月の400倍の大きさを持っているので、太陽と月の地球からの見かけの大きさは同じである

石川賢治著:月光浴 Moonligth Blueより

つまり、上記のような事で、同じような扱いなのでしょうか?

それにしても出来過ぎている事実ですよね?
400倍の大きさと、400倍の距離ですか…

最後に、人間の血液は海水とほぼ同じ成分で出来ているそうです

海から産まれたためでしょうか?私達は体内に海を持っています

海が月の引力に大きく影響を受けるように、私達の体も影響を受けるようです

月に魅入られている皆様、たまには満月の夜に外に出て、月の引力を肌で感じてみませんか?
きっと不思議な感覚に襲われるはずです…

でも、気を付けて…
朝にはちゃんと帰ってきてくださいね。太陽の支配するこの世界に…

   …おやすみなさい

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